持金剛仏のヤブユム像

 S45.9.18読売新聞夕刊「読書」欄 ”紙つぶて”のコラムの抜粋。
 ▼ 白浜温泉”歓喜神社”の隣の白浜美術館で、大阪の松原栄三郎が半生を費やした世界的コレクションによる「歓喜仏を中心としたラマ教の珍しい仏像仏画の展観」が開かれている。▼松原栄三郎が発行する「庶民金融」に『男女歓喜仏とラマ教尊像』と題し、驚くべき博識を駆使した長文の論考が連載されている。筆者名は阿能仁、アノニム(無名氏)という匿名だ。▼ラマ教主流派の本初仏(最高神格)たる持金剛仏が、膝の上に抱擁する妃の名は、なんと般若波羅蜜多、その体位は十世紀の古性典「ナーガラ・サルヴァスヴァ」にいうラリタ・アーサナ(優雅位)だというような的確な説明・・・・・。(銀)

◑ 阿能仁氏の論考の原文では、「妃は、”ラリタ・アーサナ”(優雅位)と呼ばれる前坐位(10世紀中頃の密教僧パドマシュリー・ジュニャーナ作の古性典「ナーガラ・サルヴァスヴァ」による)で、夫尊と冥合しています。」
◑ 因みに、この論考のタイトルには”ヤブユム”というルビが付いてはいるものの、『男女歓喜仏』という漢字表現は著者(阿能仁氏)の本意ではなかったはずだ。(7/11の当ブログ参照。”陰陽仏”とでも表現したいところ)ご本人にお尋ねしてみると、一般ウケにこだわる松原栄三郎氏の強い要望に折れたのだという。なお、松原氏は先年亡くなられ、そのコレクションの大部分は種智院大学のK教授が引き継がれたとか―。
(銀)は谷沢永一氏の当時のペンネームのようだが銀とはなんだろう。イブシ銀の意か?。