四天王寺極楽門壁画の十大弟子と幸之助さん

heisai2006-07-07


 四天王寺の近くの「さくらや」という古本屋さんで、面白い本を見つけて思わず買ってしまった。『四天王寺極楽門漆絵壁画』(昭和41年6月 総本山四天王寺発行)という大版の図録である。
 中の図版は「釈迦如来説法十大弟子」「武庫山越の阿弥陀如来」の2種で、それぞれの全図と部分図各種を載録している。
 その釈迦如来の膝下に侍す十大弟子の一人が幸之助さんの顔になっている。(写真は部分図のまた一部分)
 極楽門は何度もくぐっており、またこの門が幸之助さんの寄進になるものであることは承知していた。しかし、門の両側の格子の中に壁画が飾られていること、ましてその壁画に幸之助さんの顔が隠されていたことなど、私は露知らなかった。
 このことは絵かきさん(日本芸術院賞受賞・番浦省吾氏)が気を利かせたというより、お寺さんの方が大檀那の寄進の功績に報いるために、大阪弁でいうイチビリを行なったのであろう。これは笑えた。これを見たときの幸之助さんのニヤリとした愛嬌のある笑顔が目に浮かぶようだ。(仏画にはこういう手法はよくあることだそうだが・・・)

 「聖徳太子が始めて四天王寺を創立されてから実に千三百七十余年、・・・・・千年の昔より今に至る信仰の集まるこの門も、戦災のため烏有に帰した。空しく礎石を残して、草むす所であったが・・・・・。幼にして、大阪に出で刻苦精励、而も誠実一貫をもって、日本一は勿論、世界的な紳商 松下幸之助氏は、四天王寺再建にあたっては巨額の寄進をされて、古来由緒あり、人々の信仰の結晶であった、西門極楽門を建立せられた。・・・・・私はこの門と壁画の完成に当って、大檀越、松下幸之助氏に重々謝意を表すると共に、この漆絵仏画の製作と言う未だかつてなかった大偉業を完成された、番浦省吾氏の敬虔さと絶大な努力に満腔の敬意を捧げるものである。(「四天王寺極楽門について」―出口常順)」

* 京都のPHP総合研究所には松下幸之助さんに関するあらゆる文献・資料が収集されているが、この図録は未所蔵のようだ。
* 『松下幸之助「根源」を語る』(下村満子著 S56 ダイヤモンド社)に、浅草寺雷門および門にある龍神の像(平櫛田中 作)寄進のいきさつが記されている。