三面六臂辰狐王曼荼羅

heisai2008-05-29

[神仏]三面六臂辰狐王曼荼羅


 聖天・弁天・だ天 三面六臂双翼の合体尊(=辰狐王菩薩)が、八葉蓮華を光背とし、雲上の白狐に跨って天空を翔る。三面の、
  ・中面・・・象頭の歓喜天(聖天)・・・白色
  ・左面・・・辨財天・・・・・・・・・・・・・・・白色
  ・右面・・・咤(ウ冠をトル)枳尼天・・・・・肉色
その面上に、各々の象徴である
 日輪・月輪・摩尼宝珠を載せる。
更にそれらの上に、それぞれの本地仏
 十一面観音・愛染明王文殊菩薩を戴く。
※ ゆえに、中面の聖天は通常の双身のうちの片方、十一面尊の化身なのでこれは女尊である。

 四周には各々羯磨輪宝上の狐に乗った四使者(天帝釈・天女子[にょし]・赤[しゃく]女子・黒女子)が随う。
 頭上中央には北斗七星が描かれている。

※ この中尊の像容は、守覚(しゅうかく)法親王の『拾要集』「東寺夜叉神ノ事」の条に説く所の【摩多羅神】に酷似している。
 曰く「・・・中面は金色、左面は白色、右面は赤色也。中ハ聖天、左ハだ吉尼、右ハ辨才也・・・稲荷明神ノ使者也。・・・」と。
※ なお、図像の作例により、三面の配置構成にはバリエーションがある。 

 摩多羅神(まだらじん)とは曼荼羅神の謂いであって、叙上の通り、一尊でありながら垂迹(すいじゃく)・三昧耶(さんまや)・本地(ほんじ)の相関関係から成る、あたかも曼荼羅の如き仏神の意、と解すべきである。


 「三面六臂辰狐王菩薩」の呼称は、『咤(ウ冠をトル)枳尼旃陀利経』に拠る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(↓)なお、大阪市立美術館に上記・辰狐王曼荼羅に似た三面十二臂双翼の図像があり「荼吉尼天曼荼羅」と呼んでいるが、これはこの尊容を十分に言い得ておらず、「三面十二臂辰狐王曼荼羅」と呼ぶべきである。

・ 市立美術館の説明文によれば、表具の裏に「三天合形曼荼羅」の墨書があるという。http://osaka-art.info-museum.net/selection/sel_bud.html
・ 村井市郎所蔵の同図柄・淡彩粉本の紙背には「辰狐王曼荼羅」の墨書がある。