十臂宇賀神曼荼羅

heisai2008-05-31

[神仏]十臂宇賀神曼荼羅

 
 蛇頭人身(じゃずにんじん)三面十臂の怪尊。
 火天女・水天女(風天女とも)の両掌の上に立ち、左右に吉祥・訶梨帝のニ飛天が白飯(びゃくぼん)を捧げ、上と下に黒または白の三蛇神、周りに十六人の童子(=左右に各八人づつの童子石山寺本の如く、辨財天十五童子が下方にまとめて描かれている例もある。十六人の童子と辨財天十五童子とはメンバーが異なる)。
 なお、さらにその下方に半人半獣・半裸の妖しい男女が馴れ合っているような、いわば立河流的雰囲気のシーンの描かれている作例もある(=長谷寺能満院蔵ニ幅のうちの一)。

 浄厳(じょうごん)『大辯才天秘訣』上の十三丁裏に十臂宇賀神法の名があり、また『宇賀神将十臂次第』なる聖教もある。

 ゆえに、今日この種の図像(長谷寺能満院蔵・石山寺蔵・高野山親王院蔵・神護寺蔵のものなど)を「弁才天曼荼羅」「天河秘曼荼羅」などと呼ぶ向きもあるが、正確に『十臂宇賀神曼荼羅』と称すべきである。



<画像は像容理解のための仮のものです>能満院本の他の一幅は↓
http://www.pref.nara.jp/bunkaz/shinshitei/h15/5tenkawa.jpg
 弁才天とは言っても、七福神の一員の如き、ニ臂で琵琶を弾く美女ではなく、「金光明最勝王経」に説く八臂辯才天でもなく、「宇賀耶頓得経」に説く八臂辨財天でもないので、「弁才天曼荼羅」の称は甚だ不正確である。
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上記は前日・前々日のブログと同様、『京古本や往来』第50号(1990)所載「珍書稀覯画の神秘的探索」、同第100号(2004)所載「珍書稀覯画探究余聞」(ともに村井市郎著)の記述の一部を、平斎の理解・解釈に基づいて要約したものである。