主な太子伝文献のメモ

[書籍]主な太子伝文献のメモ


【1】『上宮記』・・・・・全三巻?。記紀以前の古い資料とされる。逸文
  ・「釈日本紀」巻十三に男大迹天皇の出自を示した系譜が「上宮記曰、一曰」
  ・「平氏伝雑勘文」下三に聖徳太子など諸王の子孫の系譜が「上宮記下巻注曰」として引用。
  ・また「天寿国曼荼羅繍帳縁起勘点文」に「或書曰」として引用の欽明・敏達・用明・聖徳の系譜も本書の逸文
  ・逸文の大部分は皇統譜で、凡牟都和希王(応神)、伊久牟尼利比古大王(垂仁)から山背大兄王の子の世代に及ぶ。神代の記載もあったかも知れない。


【2】『暦録』リャクロクorレキロク(一応勝手に前者と決めておこう)。逸文
 ・日本書紀を基にして、これを省略・増補したもの。
 ・広本(神武〜聖武?)と四巻本(太子関係を特立させたもの)の二種が存在したようだ、という。
 ・「政事要略」に一条(崇神の条)、「釈日本紀」に二条(景行・雄略)、「四天王寺・太子伝古今目録抄」に一条(太子)、「聖徳太子伝暦」に五条(推古)、同じく二条(皇極)などの逸文がある。(「坂本太郎著作集第9巻」による)
 
【3】『上宮聖徳法王帝説』一巻。A〜Eの5つの部分から成り、
     平安中期に成立。編著者不詳。A・Eは帝記に類する古い貴重な資料。
     「群書類従」所収。家永三郎・藤原猶雪の研究あり。
 ・A 太子を中心とした皇室系譜・・・大宝・慶雲以前
 ・B 太子の事蹟・・・奈良時代
 ・C 仏像光背銘・繍帳銘などの伝記資料を引載・・・平安中期
 ・D 太子の事蹟の追補・・・奈良時代
 ・E 欽明〜推古の五帝の在位・崩年・陵名、太子の生没年・墓所
                     ・・・大宝・慶雲以前


【4】『上宮聖徳太子伝補闕記』一冊。文字数約3300。
 ・ 平安時代初期に成立。著者不詳。 
 ・ 冒頭に「日本書紀暦録并四天王寺聖紱王伝 具見行事奇異之状 未尽委曲而 憤々不少 因斯略訪耆旧 兼探古記 償得調使膳臣等二家記」と記す。
 ・ 「聖徳太子伝暦」に多く採用され、補闕記にある太子の逸話が伝暦を通じて流布した。
 ・「群書類従伝部」「大日本仏教全書」「聖徳太子全集三」所収。新川・猶雪・飯田瑞穂の研究あり。


【5】『聖徳太子伝暦』二巻(「平氏伝」「二巻伝」「伝暦」ともいう)
 ・著者不詳。正暦三年(992)平氏某の撰か。
 ・日本書紀を骨組みとして、補闕記の記事を全面的に取り入れ、他の太子伝も参照、      撰者の創作をも加えて構成。
 ・後世、太子信仰の形成に多大の影響を及ぼした。
 ・「続・群書類従伝部」「大日本仏教全書」「聖徳太子全集」所収。
 ・注釈書に『平氏伝雑勘文』あり。


【6】『平氏伝雑勘文』上下六巻。(1314年・橘寺の僧・法空の撰)
 ・「私云」として自説をのべる。引用書は多数の仏典、中国・日本の古典、特に現在佚書となった「上宮記」「明一伝(東大寺僧・明一による太子伝)」など、貴重なものを含む。
 ・「大日本仏教全書」所収。