牛頭馬頭の梵名は?

[神仏]牛頭馬頭の梵名は?

 仏教辞典などによると、

・ 牛頭天王の梵名は、「瞿摩-掲唎婆耶-提婆囉惹」なのだそうだ。
もう少し分かり易く表記すれば、
ゴーマ グリーヴァャ デーヴァ・ラージャ

一方、
・ 馬頭観音の梵名は、「何耶掲梨婆」(Hayagriva)ハヤ グリーヴァ
だそうなので(※辞典では、後ろに観音に該当する梵語は付けていない)、
上記の「ゴーマ」はどうやら「牛」に該当するらしい、と想像される。

 中村元の「仏教語辞典」に、「瞿磨夷=牛糞」という語が見られるので、大体ゴーマは牛なのではなかろうか?。

ところが、また一方では、

・ 牛頭山の梵名は、gośīrşa(ゴーシールシャ)または gośringa(瞿室食+夌伽) で、牛角山・牛角峰山と翻ず、となっており、また、
・ 牛頭栴檀の梵名は、gośīrşa-candana(ゴーシールシャ・チャンダナ)
なのだそうだ。
すると、牛はまた go ともいうのだろうか?。śringaは多分「つの」なのであろう。(注1)

 仮にここまではまぁ良いとして、では地獄の獄卒たる「牛頭馬頭」の梵名は一体何と言うのか?。

 望月仏教大辞典で「牛頭馬頭」の項目を引くと、次のようになっている。
・ 牛頭は梵語 gośīrşa 、馬頭は梵語 aśvaśīrşa の訳。
と、こんどは馬が haya ではなく aśva になっている。
 しかも、この梵語の面からゆくと、「牛頭山」や「牛頭栴檀」の牛頭は、【牛頭天王】よりも【獄卒の牛頭】の方につながりが深いということになりそうだ。

 不可解なのはそれだけではない。実は、
いや、その話は長くなるので、続きはまた明日に。
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【追記】080510・0512
(注1)以上の点、私の推測の誤りでないことを、村井市郎先生のご校閲によって確認、同時に文中の不整合も修正することができた。(Xクマ→○ゴーマなど) 
 下記の梵語のよみ・出典・語釈も村井先生のご教示による。
ローマ字つづりはPC技術未熟のため、アクセント記号を付加できない部分があるので、厳密なものではない。

・ gośīrşaゴーシールシャ(『大方広仏華厳経』に出ず)[名]牛頭,或るNagaナーガの名,
白檀(の一種)。
・ śīrşaシールシャ [名]頭,首,頂,頂上。
・ gomayaゴーマヤ・瞿摩[慣用読み=くま](『金光明最勝王経』に出ず)
[形]牛より成れる,牛糞の。
・ grivaグリーヴァ・掲唎婆[慣用読み=げりば] [名]頭,首
・ goゴー   [男]牛,[女]牛
・ hayaハヤ  [男]馬
・ aśvaアスヴァ [男]馬

【追記】080511
牛頭天王梵語訳として、
gava-griva
というのもあるらしい。→http://osaka.cool.ne.jp/nagoya777/newpage5.htmなど。
gomaya-griva(ゴーマヤ・グリーヴァ)にしても、このガヴァ・グリーヴァ(=牡牛の頸)にしても、そのような梵名の神格がインドに元々あるのではなく、いずれも漢字から逆に梵語に訳したのではないかという感じがする。
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【参考サイト】
[神仏]牛頭山・牛頭天王についての疑問
http://d.hatena.ne.jp/heisai/20080507
[神仏]牛頭山・牛頭天王についての疑問(続)
http://d.hatena.ne.jp/heisai/20080510
[神仏]天刑星に喰われる牛頭天王
http://d.hatena.ne.jp/heisai/20080511
[神仏]牛頭山・牛頭天王についての疑問(続々)
http://d.hatena.ne.jp/heisai/20080513