「漢」という字の正字体  (メモ)

heisai2007-05-30


 「漢」という字の正字体の旁(つくり)の上の部分は、草冠.くさかんむり(++)ではなく、「廿」であるのは、「黄」の正字体の場合と同じである。このPCのひらかな〜漢字変換で「漢」のなかまを探すと、


   艱       暵       囏
などがある。これら3つの文字は旧字体のままであって、拡大すると字形がよく分かる。その旁(つくり)は”革の下に大”のような文字である。
 嘆や歎や難も、もちろん本来は仲間だが、漢同様 新字体になってしまっているので、拡大してもサンプルにならない。
 この”革の下に大”のような文字は元来、旁ではなく一つの文字として存在した(ように字書の解説に書かれている)が現在は「日偏」のついた「暵」(=カン。かわく、かわかす。乾に同じ)の字体でのみ存在する。
 字書の【解字】に、次のように説かれている。(※「艱」の項)
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カン(旁の部分)はひでり(暵)の原字。ひいて、ききん(饉。キン)をも意味する。
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・ 「暵」と「饉」とが、意味が通じるということは、”革の下に大”のような字形(カン)と、”革の下に土”のような字形(キン)とは、いとこ同士のような親類関係になるのであろう。実際、この二つの字形は篆文で見ると全く同等である。
・ なお、「饉」と「僅」とはどちらも”とぼしい”という意味を含む同じなかま。この旁は「黄」と「土」の合字であるという。
・ 因みに、この(キン)という旁(”革の下に土”のような字形)は菫(キン。すみれ)とは違う。菫(キン。すみれ)は草冠(++)であって、音をあらわすキン(”革の下に土”)の省画の上に草冠(++)を加えたものだそうだ。


            饉         菫

 さて、「漢」は古くから湖北省漢水を指すが、元来の意味は、乾いた川、すなわち銀河の意味らしい。(写真は漢水の風景)
 一方、好漢・痴漢・暴漢・悪漢など「男」の意味でも使われるが、これは匈奴の立場から漢帝国の兵士を指して「漢」と呼んだことから派生した用法のようだ。