『両頭六臂愛染王記』

 10/14のブログ<「両頭愛染明王」の事などhttp://d.hatena.ne.jp/heisai/20061014>のつづき。高野山金剛峰寺所蔵の『両頭愛染曼荼羅』の解説。


                              (上図は村井市郎所蔵。部分)


 密教図像研究家・村井市郎氏は、上掲儀軌(作法書)の道場観等を根拠として、次のように論述されている。(下図は『高野山明王像』(1993年・高野山霊宝館)より転載。下記、右・左は、図像に向かっての右・左をいう)
                


◑ この曼荼羅の中心に描かれた「両頭愛染明王」は不動・愛染二尊の合体像である。
◑ 愛染は金剛界(=陽=天=男性原理)、不動は胎蔵(=陰=地=女性原理)を象徴し、二尊合体像は、「二而不二(ににふに)」の思想を表している。
◑ この本尊は、宝瓶上の蓮華座(=愛染に特有)に坐し、火焔日輪中に住す(光背。火焔は不動、日輪は愛染に本来特有)。
◑ 本尊の頭上には両尊の本地仏が描かれている。
   右上=(胎 蔵)大日如来=無所不至の印を結ぶ=不動の本地
   左上=(金剛界大日如来=塔印(虚合の印)を結ぶ=愛染の本地  ※虚合=虚心合掌の意。
      
◑ 両本地仏の中間に、本尊の三昧耶形たる「人形五鈷杵」を配す。「人形五鈷杵」は男女両性媾合の象徴。
◑ 本尊の下方に、不動の侍者たる二童子
   右下=矜羯羅童子=身体、白〜白肉色→白象に乗り、天魔(=天狐ともいう。異鳥。 白鷹の例もあり)を射る姿。※普賢菩薩に非ず。   
   左下=制多伽童子=身体、赤色→獅子に乗り、地魔(=地狐ともいう。※狐を描くも、稲荷信仰に非ず)を射る姿。※文殊菩薩に非ず。



                         如是我聞・平斎記す(©2006・村井市郎)

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