佐々木道雄さんのこと

heisai2006-08-22

 今朝、畏友・佐々木道雄氏から『むくげ通信』第217号が送られてきた。数年前に知り合って以来、ずっと毎号 欠かさずご恵贈頂いている。氏は、私の口癖では ”焼肉研究の第一人者” だが、正確に言えば【朝鮮を中心とする東アジアの食文化史研究家】である。
 佐々木氏の著書のリストをちょっとメモしておくと、
① 朝鮮の食と文化―日本・中国との比較から見えてくるもの―(むくげ叢書・1996)
② 韓国の食文化―朝鮮半島と日本・中国の食と交流―(明石書店・2002)
③ 焼肉の文化史(明石書店・2004)

訳書◑ 韓国食生活文化の歴史(尹瑞石著の翻訳)(明石書店・2005)
共著◑ 朝鮮一九三〇年代研究(三一書房・1982)
   ◑ 新コリア百科(明石書店・2001)
 細かいのはほかにもあるだろうが、私が把握しているのはこんなところである。
 さて、今日届いた号には『朝鮮半島のキムチ(6)代表的なキムチの歴史』が掲載されていた。焼肉の連載を終えて、それを一昨年『焼肉の文化史』として出版されたと思ったら、今度はそれに引き続いてキムチの連載(「日本のキムチ」などを含め、通算で第14回目)、これが単行本として刊行される日が楽しみである。熊谷真菜さんは”たこやき”という、いわばニッチな分野を開拓して大ヒットを飛ばされたが、キムチ単独の研究書というのも今まで余り出ていないのではなかろうか?。

 今回の号では、半島のキムチを6種類に分類して、各種類の代表例(とその写真)を示し、そのそれぞれの歴史が詳述されている。
 下記のメモは、前は類別、後ろはその代表例である。
① 丸漬け水キムチ類 →トンチミ
② 切り漬け水キムチ類→ナバッキムチ
③ 丸漬けキムチ類  →チョンガッキムチ
④ 切り漬けキムチ類 →ソッパクチ(混ぜ造りキムチ)
⑤ 挟み漬けキムチ類 →オイソバギ(胡瓜の挟み漬け)
⑥ 角切りキムチ類  →カクトゥギ(大根の角切りキムチ)
 その解説の裏付けとして沢山の朝鮮の文献が引用されているのには驚く。
 また、「なお、チョンガッとは独身男性を意味するが、その名の由来は、チョンガッ大根(アルタリ大根)から伸びる長い葉が、朝鮮朝時代の独身男性が髷を結わずに長く後ろに垂らしている姿とよく似ていることによる」という説明や、また[カクトゥギ]については、18世紀初めの『春香伝』に「カクテギ」の名が登場すること、その語源「刻毒気」説への反対意見などが述べられていて、なかなか興味深い。

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 なお、今日のブログは、カテゴリーを一応[猪飼野]に分類したが、これは全く正確ではない。
 実は私自身”猪飼野とホルモン焼き”のテーマに熱中していた一時期がある。そして、そのころ発刊された『なにわ万華鏡』「ホルモン焼きのルーツ/元祖は旧猪飼野にあった」(東洋経済新報社・1999・有馬てるひ著)と、『むくげ通信』の氏の焼肉の連載記事、この二つの雑誌を通じて私と佐々木氏が互いに相手の存在を知ることになった、という理由によるのである。