近 事 片 々
・（7/12） 韓国から来て、日韓両国の文化の違いに興味を持ち、いろいろと調べている姜信英さんが、先日こんな相談を持ってきた。
『血と骨』の小説や映画が読者・観客に訴えようとしているものは、一体何なのか？。一度、人を集めて現地フィールドワークと感想討論会とを兼ねてやってみたい、とのことだった。
確かに、この小説・映画は文句なしに面白いことは間違いない。しかし、過日東成区役所主催で行われた、
多文化共生のための講演会「梁石日（ヤン・ソギル）が語る『血と骨』」については、この作品をアピールすることが、ほんとに多文化共生になるのかどうか、この点が私にはよく分からなかった。”韓国人の野蛮さだけが強烈に印象に残った”では、共生や町おこしの材料として、果たして相応しいのだろうか―という素朴な疑問が私自身の気持ちの中にもあったので、姜信英さんの言わんとする趣旨はよく理解できた。
そこで私は姜さんに、東成区の人権推進協議会会長の小川治海氏（前記講演会の中心的な関係者）と、梁石日氏の幼馴染みという坂上忠氏（映画『血と骨』の製作協力者、東成区大成連合第11町会長）のご両人から、いろいろと参考意見を聞いてみることを勧めた。この日、7PM、小川事務所にて約3時間、4人で懇談。
・（7/15） 昼、姜さんとコリアタウンの洪家食工房の二階のギャラリー「渡来」で開催中の李 朋彦（イ・プンオン）写真展『在日一世』をちょっと見る。南原商店のオジサンの写真、半生の記事も展示されていた。丹念な取材に感心させられた。「ゆうちゃん」の焼きそばと玉出のキムチで昼食。
同日、中甚兵衛十代目の中九兵衛（なか・くへい。本名 好幸）氏より、『於吉奈我河考』（大和川叢書）が冊子小包で送られてきた。有名な方なので私はこの方のことはもちろんよく存じ上げているが、著書の寄贈を受けるのは意外である。私が『寄合酒』に三津井康純氏の「今川＝息長川」説に激励の一文を寄せたことと、大阪日日新聞の「澪標」記事の二つで、私のことを知られたようだ。地図も豊富で、なかなか面白そうな本である。ゆっくり拝読させて頂くことにする。
・（7/16） 朝、大阪日日の朝刊を開くと、死亡記事欄に「李 容柱」という人のことが載っていた。私は李 容柱氏をよく知っているが、まだ死ぬような歳では全然ない。それにしても同名の人がいるのだなあと思いつつ読み進めると、なんと正真正銘の同一人ではないか。コリアタウン推進委員会を組織した中心的人物として、以前一度、この生野コリアタウンでワンコリア・フェスティバルをワンコリアの団体と共同で開催したように聞いている。この新聞には「全国最大のコリアタウン、大阪市生野区の御幸通商店街のコリアタウン推進委員長として、日韓が共催した2002年のサッカーのワールドカップ（W杯）で韓国戦の合同観戦会を主催し、交流に尽力した。」「14日午後8時・・胃がんのため死去、45歳」などとなっている。
御幸通商店街のド真ん中に立派なビルを建てて、「K−Wave」という韓国グッズの店を経営していた。告別式の当日であるこの日、その店をちょっと覗いてみると、普段となんの変わりもなく営業していて、数人の女店員が忙しそうに客の対応をしていて、これにも驚いた。
李（安田）氏と私とは、友達といえるほど深い親交はなかったが、しかしまんざら浅くはない関係にあった。アッサリしたいい男だったのにと、たいへん残念だ。
人の命ははかないものだ―と、つくづく思う。
コリアタウンの裏側にある公園で、井上修範氏（御幸通東商店街理事長）と会う。ゆうべ李氏のお通夜に行ってきた、とのこと。御幸森天神宮の夏祭りに合わせて、こちらの商店街でも”こども祭り”を開催している。井上氏の企画力と実行のバイタリティーには脱帽のほかない。
帰ったらうちの郵便受けに、雑誌『KOREA TODAY』（通巻第360号）が放り込まれていた。友人の者奎通氏が入れていってくれたものと分かった。毎号彼の詩が連載されている。この号は「移民」と題して、「日系の移民のドラマに泣きながら 我が家の渡日かえりみており」（2005年10月、NHKで放映されたドラマ「ハルとナツ・届かなかった手紙」には正直泣いてしまった・・・）などと載っている。
塩川慶子さんの「渡来人の足跡をたずねて」と「筆者のよもやま」のふたつの記事の長期連載にも脱帽だ。今回のよもやまは、淀川区の十三公園西側にある「百済山空楽寺」を取り上げている。そんなところに”百済山”というお寺があったとは・・・・・。
＜四天王寺ワッソゆかりの地をたずねて＞歴史探訪・日帰りバスツアーの記事もある。NPO法人大阪ワッソ文化交流協会主催、同ワッソ実行委員長の猪熊兼勝・京都橘大学教授の解説で6月10日に行われたそうだ。
コースは滋賀県湖東の鬼室神社（蒲生郡日野町小野。白村江の戦の時の渡来人・鬼室集斯を祀る）〜石塔寺〜朝鮮人街道。
この催しのことは知らなかった。鬼室神社には是非一度行きたいとかねてから思ってはいるのだが・・・。
