「白龍大明神」の続き

heisai2006-07-05


 昨日書いたように松下電器の守護神の中心は「白龍大明神」である。この白龍が早い時期から松下に祀られていたために、昭和8年事業部制開始に伴って、他の四色の龍神祭祀の構想が生まれたのに違いない。
 そうだとすれば、最初に祀られた龍神が白龍であったことは、後の展開にとって非常に好都合なことであった。
 密教による方位と色との関係は、白を中心として四方にそれぞれ青・赤・黄・黒の四色(金剛界と胎蔵とでは青と赤が逆方位)を配することになっているから、中枢である本社の守護神が”白龍”であるというのは理に適っているからである。
 
 さて、その松下本社に白龍が祀られた由来は、断片的に次のように語られている。
● 1978(昭和53)年12月29日 NHKのインタビュー(松下氏の発言要旨)
 「商売を始めて3月ほど後、阪神道を通っていたとき、真っ白の蛇がその横をズーッと通って入って行くのを見て、幸先がええなという感じがした。(後年)加藤大観師に話をすると、やっぱり白龍はよろしい、ということで白龍神社というのを祀った。それで今、全国の工場・会社全部に龍神を祀り、加藤師の没後も二代目、三代目の得度をした社員を専門の坊さんとしてつけている」

● 『経営秘伝―ある経営者から聞いた言葉―』(1991.11.1 江口克彦著 PHP研究所)P33
 「以前、この庭で、きみと勉強したことがあったな。
 えっ? あのかえでの枝に大きなへびが巻きついておって、わしら、その下を通ったことがある? それは知らんかったな。そうか、そういうことがあったのか。そりゃ、お互い、運がええで。
 昔な、わしがふたつか、三つのときに和歌山の家にな、大きな蔵があったそうや。むろんわしは覚えておらんが、会社がほどほど大きくなったころ、昔あなたの家でお手伝いをしておったものですが、といって訪ねてきた人がいてな、そのおばさんが言うにはその蔵には主と言われていたへびが一匹住み着いておったそうやが、ある日、わしの兄さんや姉さんたちが集まって、まあ子供だから遊び半分ということもあってそのへびを石かなんかで殺してしまったというんや。
 あなたは小さかったからそれに加わらなかった。遠いところから眺めておっただけやったということや。それでな、その人がいうにはあなたの兄弟が早死したのはそれが原因です、あなたが成功したのはそれに加わらなかったからです、とそういうことを言いにきたことがあったな。まあ、そうかどうか知らんが、ああ、そういうこともあったんかと思ったことがあったな。
 白いへびもわしは見たことがあるよ。商売をはじめたてのころやったな、阪神百貨店があるやろ。あのわきを歩いておったら、わしの前で白いへびが道を横切ってな、いや、そんなに大きくはなかった。(中略)まあ、だからどうと言うことでもないけど、へびはいじめんほうがええようやな。
 へびの下を通ったということは縁起がよかった、とそう考えよう。わしも百八十歳までいけるかもしれん。ハハハ。」